サンタクロース(許されざる真実)

紅葉の景色が、まだまだまぶたに焼き付いて

身体に残っているような気でいたのに。

寒い、寒いというより冷える、冷え込む。

まるで強く厳しい冷気に抱かれてるようだ。

冬の寒さが身に染みるようなると、一年

一年、死ぬ日が近づいているような思い

がじわじわ、じわっとひどく感じる。

いくらあがいても、行く着く先は

決まったようなものなのかな?

昨晩より段どった暖房機器の温風に手をかざし

暖をとりながら、そんなことを考えていた。

ふと気付くと、街はだんだんクリスマスに色づいてきた。


などと心細いことを考えてしまうのは

最近何かと気の滅入ることが多いためか?

来年春にはよわい60を数え世間でいうところの

還暦、ひと回りしてもとに戻ってしまう《年寄り》

というカタゴリーに入ったこの身が何ともいとおしい。


子供の頃のこと。あれは、そうだ小学一年生の年の瀬、終業時、

左となりの席の当時としては珍しい、ほんのり肥えたおかっぱ

頭の色白のおとなしい女の子が「いっしょに帰ろ」と言うので

断わる理由もないから、校舎の北がわの通りに面した裏門から

東に向けてテクテクとふたつの小さな木枯らしは家路に向かう。

女の子の家の近くになると、「いっしょに宿題しよう」

「え、石川さんの家で? 」とふたりは家の中へ消えた。


入って、いっときは過ぎただろうか。すでに、夕闇が濃い。

ひとくぎりついた女の子が奥の引き出しからクリスマス色の

包装のチョコレートのひとかけらをひそかに口にほおりこんだ。

「ムシャ、ムシャ」さらに、ひとかけら砕くと

すっと男の子に向けて、

「ふん、こうじくん、食べんかい」「ありがとう」

(ありがたい、うんめえ)「おいしいね」

「うん、わたしチョコレート一番好きなんよ、

こうじくんも・・・(好きよ)」

(小さな声ではっきり聞き取れなかったが)

(そう聞こえたと僕はいまでも思っている)もうすでに天国に

旅だった彼女から真相は聞き出せないのが残念ではあるが・・・

彼女はひとつ上の兄とのふたり兄妹で、転勤族で、財閥企業の

住友関係か、電力会社に勤める父と働き者で家におじゃますると

必ず紅茶とイチゴケーキをかまってくれた心優しい母、(でも

バカのひとつおぼえみたいに、

「こうじくんは家どこ? 」って聞いて決まって「あーあっ、」

「しずとし(父の名前)、さんとこの」ってうなずきながら

応えていたのだが、子供ごころに大人のあいそって

始末に悪いもんだなと思ってた)との

4人家族で、当時としては核家族のはしりであったろう。


それが証拠に・・・お互い照れ臭くて目を合わさない様に、

ただただ部屋のどこぞに目をやっていた。

しばらくして、「そのチョコレート、お母さん、

買ってくれたん? 、ええねえ」と男の子がたずねた。

瞬時に目つきが変わった女の子は

「ううん、違うよ」女の子は、

向きを変えて男の子の目をみつめ、

はっきりとした口調、きりりとした表情でこう答えた。

「サンタクロースさんが、プレゼントでくれたんよ」


再び思い出した。

そんなこともあって、人の優しさがことに身にしみる、

涙がちょちょぎれる。つい先日のこと、

知り合いのお母さんから、どう見ても23,4の独身、

ふっくりした顔立ち、からだつきで、人がらもさばけた。

男気のない女性だけの中学、高校を過ごしたためか、

他校の学生と当時から恋におぼれて若くしてみおもになり

就職と同時に認知を受けられぬとも男子を出産、親元を離れて

シングルマザーの苦労人なのだが、それだけに、ほっとけない。

「このままでは、」「義理がたちませんから」と

さんざん子供のめんどうをみた我々を気づかって、

夕食の席を設けてくれた。当然、その席には、

少し気の早いサンタクロースから

プレゼントを受け取った男の子の姿も。

大人の手のひらサイズの大きさが評判の《チキン南蛮》の

有名店「鳥シン」席について料理を待っているその間のこと。

「もう4歳になったから」「そろそろ現実を知るのも」

「いいころかも・・・」言下に、言うか言わないかで

母親の顔つきが瞬時にこわばり眼光鋭く(えッ、信じられない)

「よしてくださいよ」おどろきの表情からいささか怒りの表情に

変わっていくのを僕は見逃さなかった。「まだまだ、夢は夢の

ままにしておきたいので・・・」と、言い終えた彼女のいらだち

とその焦りが手に取るようによくよくわかったため、となりの

子供を引き、頭をなでよせた。微笑みかけると返してくれた。

なおも引き下がらないで、

「ところで」「プレゼントはどこに」

「で、プレゼントは枕元に? 」「置くんですか? 」

「いいえ、ツリーのそばに・・・・」言い終わらないうちに

口もとを手で抑え「あっ、」(あぶない、あぶない、

聞いてたかな? )「もう、やめてくださいよ」

「誘導尋問じょうずですね」「ほんと、もう」

「こわい、こわい」「わかってますかね? 」

「大丈夫でしょう」「わかってないでしょう」

「まだ、むじゃきに笑ってるから」男のコはこうべをたれて

ただただまわりにひきつられて、愛想笑いでほほえんでいた。

「ごめんなさいね」「いえいえ、」「私のほうこそ、」

「場をしらけさせないようにと、思って」

母は頭をかきながらベロを引き出しして

笑いながらこたえてくれました。こちらも

申し訳なさが心にきわまってはじけながら

頭をさげた。


今日はここまで。近藤浩二でした。

ではまた。皆さん、良いクリスマスを・・・


子供のころから、厳しい現実を肌身に感じていたため、

クリスマスの甘ずっぱい夢はいっさい感じられずに少年期を

過ごしてきた。いちどでいいから、サンタクロースにあいたい。


その後僕はあきれて石川さんにこう言った。

「サンタクロースなんか、」

「いるわけないやろ」

「全部、お父さんか、お母さんが」

「買いよんよ」「石川さん」

「ほんとうに子どもやねえ」

「僕は保育園のときから」

「知っとるよ、」

「サンタクロースなんかいないと」

僕はしたり顔で言ってしまった。子供のしたこと

にしても、ほんと罪なことをしたもんだと、今は思う。

そんなこんなで、その後彼女の僕への態度は冷たくなった。

で、若くして、サンタクロースにつれていかれたのかな・・・


もう、決して、あやまることさえ許されない。

なんだかひどくつらい、切ない・・・・

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