私の命(第2部)

昼食の時間になり、各自弁当を広げて食べ始めました。康平は家

が裕福ではないため、おかずの品数も少なく見た目にも豪華では

ありませんでした。一方靖子の弁当は裕福で母親も几帳面なの

か、カラフルで豪華で遠足の時のようなよそゆきの弁当でした。

康平が、がつがつとむさぼるように食べていると靖子が話しかけ

てきました。「杉村君」「これ食べて」「私あんまり好きじゃな

いから」とあらかじめ弁当箱の蓋によそおっておいた、おかずを

康平に寄せて、お箸で採ってと促してきました。「ありがとう」

と、康平はお箸で取り上げて自分の弁当箱に収めました。お母さ

んの手作りなのか、初めて食べる肉料理でとっても美味しかった

のでした。「美味し!」「お母さん、料理上手!」と反応すると

靖子は嬉しそうに笑っていました。


午後からの授業も終わり帰宅時間になりました。

靖子が話しかけてきました。

「杉村君、自転車?」、「うん、自転車」、「もう帰る?」、

「うん」、「どこ?」、「***」、「はーん」康平がカバンを

抱えて「さようなら」と声をかけ、教室を出て行きました。康平

はトイレに立ち寄り駐輪場を出て、自転車を手で押して裏門まで

出ていると、後ろから声がしました。「杉村君!」後ろを振り返

ると靖子が手を振ってきました。

「ちょっと、待って」靖子は近づくと「一緒に帰ろう!」、「ど

こ?」「**、すぐ近く」

康平は彼女の徒歩の速度に合わせて自転車に乗り、彼女の後を付

いて行きました。

10分程して彼女の家の近くになると「杉村君、家に寄って帰っ

て。数学教えて、代わりに英語教えるから」と振り返り真剣な眼

差しを向けてきました。康平は素直に嬉しかったのでした。そし

て、靖子が小学校当時の初恋相手かどうかを、確かめたかったの

でした。そのため彼女にかなり興味があったので「かまへんの、

本当に」「うん、ぜひ、寄っていって。」「うん、わかった、

じゃ、一緒に勉強しよか」康平は靖子の家に立ち寄ることにしま

した。


二人は靖子の家に着きました。「この家が私の家」

彼女の家は康平の家より若干小さめではありましたが、門構えの

しっかりとした、庭も大きな手入れの行き届いた、まだ建てたば

かりなのか、新しい綺麗な家でした。

「絶対金持ちなんや、ええな。」と康平は思いました。彼にとっ

ては門がある家も初めてなら、ドアノブでドアを開けて家の中に

入ることも初めての体験だったのでした。

女の子はカバンから鍵を取り出して、ドアを開けて康平を招き入

れました。康平には鍵で開けて、自分の家に入るという行為は、

何か奇妙に感じました。

何か異国に来たようで、異質な何かを感じましたが全然不快では

ありませんでした。

家の中は綺麗に明るく装飾され、見慣れない物や花がいっぱいあ

りました。靖子の部屋に通されました。

部屋の中は窓から春の陽光が射して明るかったのでした。しかし

、彼女は部屋の明かりを点けました。

「目が悪くなるから、必ず部屋の明かりは点けるの。変かな?」

「そんなことないよ」部屋には小さな勉強机がふたつ並んでいま

した。

「私小学生の頃、病気で長い間入院していたの」「たぶんその病

気が原因で、私、身長伸びなくて、小学校からの机今でも使って

いるの。隣はお兄ちゃんの昔の机」「杉村君こっちに座って」

「うん」康平は靖子の兄の椅子に腰掛けました。

康平は女の子の部屋の中に入るのは初めてなのでした。何か気恥

ずかしい気持ちがありましたが、その一方で、靖子が初恋相手で

間違いないであろうと分かっていましたから、なおさら靖子にす

ごく興味がありました。

「どのような生活をしているのだろう」、「いったいどんな女の

子なのだろう」と康平は椅子に座って考えながら、窓からの春の

夕焼けの日差しがまぶしくて部屋の中をきょろきょろと見回して

いました。

しばらくして、靖子が普段着に着替え直して椅子に座りました。

「杉村君、何か飲む」「うん、ありがとう、何でもええよ。」

「うん分かった、ジュース持ってくるね。」と言って靖子は、お

盆にオレンジジュースが入ったコップをふたつ持って、戻って来

ました。

「ありがとう」と康平は応えました。ひとつ取り上げて、一口、

ジュースを飲むと康平は気分が落ち着きました。そして康平は意

を決しました。靖子に聴きたいことを聞こうと決めました。

康平は机の上にコップを置き、靖子のほうを向き返しました。今

度は康平が真剣な眼差しで靖子を見ました。

「柴崎さん、ちょっとかまん」「何?」


今日はここまで。近藤浩二でした。

では、また。


数年前であろう、改めて読み返して、

極めてふつう、ありきたり、つまらん、退屈。


 

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