私の命

最近、気が付いたこと。大切な事は戦い続けることなのだ。と

そこで、とりあえず、パソコン整理しようと、修理に出す前に、パソコンのアーカイブに残っていた、データ見返して見つけた。

プロローグだけ載せますね。よかったら読んでみて・・・


その年の春は冬の寒さが長引き、桜の開花も例年に比べると遅く

4月になってもまだ肌寒い冷たい風がたまに吹く季節でした。

その春、柴崎靖子は晴れて高校生になりました。

そこの高校は地元では文武両道で有名な進学校でした。ですから

近隣の町からも多数の新入生が入学してきました。


そして、この春に新しくあつらえた、黒に近い紺色の制服を羽織

ると、色白の丸い顔の彼女には非常によく似合ったのでした。し

かも、その姿は清楚で凛とした風情を漂わせており、けがれた所

は一切感じさせませんでした。時折、勝気そうに、ツンツンとし

て切れ長の目をした顔つきで、少し腰を振って髪の毛をふわふわ

と、漂わせながら歩く姿はすごく魅力的でした。

その小さくて可愛い女の子は、しかし当時、裕福な家庭の女の子

にありがちな、少し栄養過多で運動不足であろう、白い太い足の

少し肥えたぽっちゃり型の女の子でした。そして几帳面な性格で

両親の躾がしっかりしていたのでしょう。脱いだ靴をきちんと揃

えて玄関の左の靴箱に収めました。

彼も靴を脱ぎ、彼女の勧めたスリッパに履き替え、彼女の後を付

いて家の中を歩きました。彼女は自分専用の名前の書かれたカラ

フルなスリッパに履き替え、自分の部屋に進み小走りで歩きだし

ました。それと同時に振り返り、彼を見上げ微笑みながら「こっ

ち、こっち」と手招きして、小洒落た部屋の扉を開けて彼を通し

ました。

初めて女性の友人の家にやって来て、戸惑いつつも彼の心は少し

わくわく踊っていました。

部屋の明かりが点くと、部屋の左脇に小さい勉強机がふたつ並び

彼女は左側に座り、彼は残った右側に席をとりました。

机の前には小さな窓があり、庭先の背の低い松の枝が彼の気持ち

と連動して風に揺れていました。

彼女は「ちょっと、待って」と言うと、カバンを置いて部屋を出

て行きました。

数分後に彼女は戻って来ました。制服からラフな部屋着と思われ

る緩めのジーンズを履き、少し肌寒いのか薄手のカーディガンを

上半身にまとっていました。

「家に帰ったら制服脱がないと、直ぐしわになるの」、

「女の子は大変だね」

一章

大都市から遠く離れたその村は郵便局すら無く、幹線主要国道が

一本通っていただけでした。そこでは色とりどりなネオンが輝く

わけでもなく、華やかさとは全く無縁な場所でした。ただ陽光と

雨露だけが、贅沢さの象徴とされる田園の広がる小さな田舎村で

した。

そんな場所には似つかわしい貧しい杉村家の次男坊として康平は

生を受けました。同級生の中では最も歳が若いため、小さくて背

丈が低いのでした。

彼は中学生になっても成長期がやって来ず、身体が仕上がらず、

小さくて力も弱かったのでした。その上に顔の表情もまだ子供の

ような顔つきのままでありました。しかしそこがまた高校生にし

ては可愛らしかったのでした。

しかも、身体の大きさが中学生時代からそれほど成長していなか

ったため、中学当時の制服を高校のボタンに付け替えたまま、着

続けていました。制服がそのままで3年間使い続けたため、生地

が少し傷みかけており通常より薄くなっていました。

しかし、活発で動くことが大好きなため、いつもお腹を空かして

いました。

その日は、入学式から初めての登校日にあたり、同じクラスの同

級生との初めての顔合わせでした。

その日は春にも関わらず朝からすごく寒くて、風が吹いていまし

た。

康平は白いワイシャツ一枚に薄手の上着をまとっただけで、見た

目にも寒そうでした。時々くしゃみが出ました。「ハクション」

他の生徒たちは、学校指定の紺色のコートをまとって寒さをしの

いでいました。

初めての登校日なので時間の都合がよくわからないため、康平は

余裕をみて定刻の30分前に自転車で家を出ました。最も近道と

思われる道を父親に買ってもらった腕時計を見ながら走り、10

分程前には学校に到着しました。一人で教室を探し出し教室に入

りました。自分達のクラスだけが、なぜか他のクラスの教室とは

別棟の教室でした。

教室に入ると、中学校当時の知り合いが多く少し安心しました。

指示された席について少しの後、左隣の席の女の子がやって来ま

した。女の子は彼女のほっぺと同じ色をした赤くて真新しいマフ

ラーを掛け、品のよさそうな、憧れのお金持ちの生活をしてなさ

るような質の良いコートを羽織っていました。

その子はコートとマフラーを脱ぐと買ったばかりなのか、くっ付

いたごみをこまめに取り除き、丁寧に折りたたんで大きな持参し

た紙袋に入れて机の横のフックに掛けました。

「おはよう」と少し鼻にかかった声で女の子は、康平を見て声を

掛けました。康平も「おはよう」と彼女を見て恥ずかしそうに答

えました。

康平には、中学校時代より密かに思いを寄せていた別の女の子が

いました。しかしその女の子とは一度も話したこともなく、ただ

眺めているだけで幸せを感じていました。見かけるだけでいつも

ドキドキしていました。そしてその子も同じ高校に入学していま

した。

康平は隣の女の子を一瞬見た時「あれ」と思いました。中学校時

代は見かけたことはなかったから、他の中学校からであることは

察しがつきましたが、どこかで見かけたことのある顔つきだった

のでした。でも思いだせませんでした。

チャイムが鳴り終わり少し後、担任が入ってきました。担任は男

性で背丈が高く180cm程ありましたが、威圧感が無く優しそ

うな顔つきをしており、康平はほっとしました。

担任の挨拶が終わり、今度は生徒一人ひとりが出席番号順に自己

紹介していきました。「杉村康平です。」隣の女の子はこちらを

見てにっこりと微笑みました。

男子の自己紹介が終わり女子に移りました。康平は一人ひとりの

名前と顔をしっかり確認していきました。康平は人を覚えるのが

得意で、一度名前を聞くとほとんど忘れることはなかったのでし

た。

隣の女の子が「柴崎靖子です。」

康平は聞き覚えのある名前でした。その名前は小学校当時康平が

密かに思いを寄せていた女の子の名前でした。康平は靖子をよく

見ましたが、当時の面影が感じられませんでした。当時の彼女は

髪の毛が少し天然パーマで癖のある髪質でした。しかし現在の彼

女は髪質の太い黒髪の直毛で肩近くまで伸びていました。「まっ

たくの別人なのかな」とも思いましたが、同い年でしかも同姓同

名でした。隣の女の子がいつもちらちらと康平を見るのを康平は

気が付いていました。隣の女の子も康平に見覚えがあるようでし

た。「きっとあの子に間違いないだろう。」と康平は確証が持て

ないままその時は自分に納得させました。

彼女のことが気にはなっていましたが、話しかけるきっかけをつ

かめず下校時間になりました。その日は係や委員を決めてすんな

りと帰宅しました。

「さようなら」康平は靖子に声掛けしました。

「あ、さようなら」靖子が康平を見て軽く会釈しました。康平も

学生帽を取り軽く会釈しました。

二章

次の日から本格的に授業が始まりました。数学が最初の授業でし

た。康平は数学が好きだったので教科書を配布された時から自分

ひとりですでに30ページほど予習をして、問題を何度も自分で

解いて理解してマスターしていました。ですから余裕で授業を受

けることが出来ていました。

先生の説明が終わり練習問題を各自で解かされました。康平は朝

飯前とすらすらと鉛筆を走らせます。靖子は数学が不得意なの

か、なかなか鉛筆が進みません。何度も書いては消しゴムで消す

という作業を繰り返していました。靖子は康平の進み具合を横目

でちらちら見ていました。答え合わせになり靖子は先生に当てら

れるのを恐れてちょっと不安そうにきょろきょろ辺りを伺いなが

ら赤鉛筆で丁寧に修正していました。そして康平の全問正解のノ

ートをのぞき込みため息をつきました。「あー!あー!」

「いっぱい間違えた!」「杉村君、かしこー」。康平は少しはに

かんで靖子に微笑み掛けました。

次の授業は英語でした。先生が康平の前に来て康平に英語で質問

しました。唐突に英語で質問を受けて康平は戸惑い答えることは

できませんでした。その後靖子が質問を受けました。彼女はてき

ぱきと英語で答えていました。靖子は康平を見て得意そうに微笑

みました。


今日はここまで。近藤浩二でした。

では、また。


全61ページのまだ、完結できてない未完のはなし。

少し自叙伝的小説です。毎回すこしずつ載せていきます。