誕生日

そこは家から10分程のところでした。助手席に乗り込むと

妻が「今日おいちゃん、誕生日よ」と、同時に後ろを振り返ると

「おいちゃん、お誕生日おめでとう!!!」と5歳の女の子が

僕に笑顔を投げかけてくれました。時を置かず、2歳の弟君まで

も「あっ、おいちゃん、誕生日おめでとう!!!」と口にしたの

です。「ありがとうね、ふたりとも」と返すと、お姉ちゃんが

「ほんとは、プレゼントあげたいのに・・・」

「分かってたら、家から持って来たのに・・・」と大人顔負けの

ませたセリフに、感じやすい僕は正直泣きそうになりました。

幼稚園で躾(しつけ)の一環で覚えさせられたのでしょうが

初対面の大人の男性に、強制された訳でもないのに、なんの屈託

も無く反射的に口に出せるのです。《恐れいりやのきしぼじん》

一方最近、リハビリ通所で4月から誕生日祝いが突然取りやめに

なり、残念に思っていたところだっただけに、不意の心遣いに

感激いっぱいでした。どんな時代、どんな境遇であろうが、どん

な人生を送ろうが、誰もが持っている、本人の唯一無二の記念日

である誕生日。絶対、誰だって祝福されたいはず。


どこで、どんな風に祝うかは、個人によって様々でしょうが

想定内の演出は《ふーん、》て感じですが、まったく

予想だにしていない出来事に、僕の心は大きく揺さぶられま

した。数分後到着した場所は市民グラウンドに隣接した幼児

公園。僕はひとり車に残り、妻と子供達がふわふわドームで

戯れているのを眺めていました。風が強く肌寒かったのですが、

少し陽に当たろうと降車して、のそのそと杖をついて

歩いていると、お姉ちゃんが僕に近づいて来て、僕の顔を見なが

ら「大丈夫? 大丈夫?」って何度も聞いてくるのです。笑顔で

「うん、大丈夫よ!!」って答えそれでも、のそのそと歩いて

いると、今度は僕の少し後ろに回って、僕の左腰を軽く触って

「大丈夫。大丈夫」と声掛けをしながら一緒に歩いてくれたので

す。言葉に出来ないくらい感激、心動かされました。「ほんとに

ありがとうね。**ちゃん」と言って顔を覗き込みました。

二重瞼のパッチリおめ目に、バランスのとれた品性の良い、

とっても可愛い顔立ちにびっくりしました。性根が良いから、

素顔が素敵なのか、見た目が良いから、心根も良いのでしょ

うか、どちらにしても、早熟で、めんこい素敵な女の子との

出会いに感謝感激。夕食は居酒屋で乾杯。雇われ女性店員まで

も「なんにもないね・・・・ハッピーバースデー」て、祝福して

くれました。注目の新元号の話題より先に言ってもらえました。

歳をとらないと味わえない幸せもあることを再認識。


帰りの車中。僕らの近くまで身を乗り出して「おなら出た」

少しも悪びれる素振りも無く言い放ちました。その後

僕たちの会話の中で「はい、はい」と、どちらかが言うと

「はい、は一回」と、後ろから、突っ込んできます。

こうして僕たちはわずか半日で、とっても仲良しになりました。

これは人生おける、変動しうる幸福の最大値の、ひとつの出会い

といえるでしょう。58歳になった僕の人生。

まだまだあるじゃないか・・面白いじゃないか・・・

姿勢はエンジョイ。知識はぼちぼち。子供たちとのゆるふわ

交友関係。微笑ましくも、軽ーい関係であっても、人生を

色鮮やかに彩(いろど)るのでしょう。普通、幸せな人間は

自分に正直で素直です。そして自分の幸せに集中するもので

しょう。この素直な思いを正直に表現する人間を僕は愛します。

その上で、自分が「この人は素敵だ!」と思った人と出逢った

際に、恥ずかしくない自分でありたい。まだまだ人生の醍醐味

を見つけよう、探そう、求めよう、手を伸ばし続けよう、そこに

辿(たど)り着こう、まだまだ、いたずらに過ごしてなんか

いられない、安穏(あんのん)として居られない、と思いを

新たにした58回目の誕生日でした。ベストセラー

『七つの習慣』の著者は言っています。「 最も大切なこと

は、最も大切なことを、最も大切にすることである」今後は

これを実践していこう。人生には色々な生き方があります。

《自由に生きる》生き方だって、《豊かに生きる》生き方だっ

て、《自分らしく生きる》生き方だって、ただし無理をしないで

楽しみながら生きようと思っています。今後ともよろしくです。


今日はここまで。近藤浩二でした。

ではまた。PS I LOVE YOU.


陽の気配が感じられるが、闇がまだ、少しずつ入り混じって

いる、春の明け方。まだまだ肌寒いため、布団の中でごそごそ、

夢うつつの内に時間がいたずらに過ぎて行く。とてつもなく

贅沢な目覚めを頂く。そんな寒の戻りの朝を迎えた誕生日。