嬉しくない好意

先日遠方の友人から小荷物が届きました。

僕の独身時代の同僚の独身男性からでした。

DVD一枚だけが入った小包でした。何のDVDなのか

分からないままテーブルに置き去りにしていました。


少し遅れて彼からメールも届きました。BSテレビで

放送された歌番組を録画したので送付します。との内容でした。

我が町、伊予西条市で公開録画された一時間の特別歌謡祭です。

僕の母校の西条高校のコーラス部も特別出演しています。

との説明がなされていました。

彼とはもう10年近く会うことも

電話で話すこともしていません。年賀状だけでの

やり取りの間柄でした。

僕としてはここのところ慌ただしくて、特別に話をする

内容も無いので、連絡を取ることも無く忘れていました。

今日再度メールが届きました。DVD割れていませんか?

観ましたか? どうでしたか? との問合せでした。


もし僕が故郷を離れて、独りで暮らしていたのでもあれば

故郷の話題は郷愁を誘われ、懐かしさのあまり

感極まることでしょう。

そしてそんな彼の好意に、心の底から感謝感激するでしょう。

「ふるさとは遠きにありて思うもの」

「そして悲しくうたうもの」

で始まる室生犀星(むろうさいせい)の詩は有名です。

僕の友人はこの詩の心情を、遠方の友人の僕にへと

想いを馳(は)せて、僕に保存版にして何度も

観てほしいとの優しさから、あふれ出た行動だったはずです。


しかし今の僕は30年近く離れていた故郷に20年前に

結婚を機に、住み着いているのです。もうすでに、

故郷に帰ってきて、現実の日常生活の中で、

子供の頃の思い出に、自然と日々懐かしく、

物悲しくなっているのです。

間違っても、作為的なテレビ映像を観て、改めて

故郷に想いを馳せることも

感傷に浸ることも、もはやあり得ません。


彼の「好意」は、少しは理解出来ます。

「ありがたい」とは思います。

「優しい友人」とも思います。

しかしながら、忙しい今に、感謝の気持ちを今すぐにでも

伝えてあげたいとはどうしても思えません。

彼の考える「故郷への熱い思い」と僕の考えるそれとでは

微妙なところで、何かが大きく異なるのです。


非好意的に考えてみると、ぼくより少し年上で、

一人っ子で独身の彼は独り身の《寂しさ》を紛らわしたくて、

近くの友人より、遠方の僕に懐かしさ、親近感を覚え、

誰かにかまってもらいたくて、

優しくしてもらいたくて

他人に優しくしたくなったのではないのだろうか?

その誰かが僕であったのだ。少々子供じみて思えるのだが、

彼の心情は僕にも痛いほどよく理解できます。

そんなに時間を置かずして、その気持ちに答えて

あげたいとは思っています。

しかし、そこで僕は思ったのです。


誰かに何かをしてあげようという《親切》、

してあげたい想う気持ち《厚意》は

どのような人にも、誰にでも、自然とわきあがる感情でしょう。

しかしその動機付けは様々です。


その人への純粋な親愛の気持ちから行われた

《好意》であるならば、その想いは相手に確実に

素直に届くはずです。でもその《好意》が自分自身にも

《見返りの厚意》も考えての、ものであったとしたなら

もはやそれは《好意》ではなく《おっせっかい》です。

そうなのです。受け取る人によっては

嬉しい《親切》では無く、ただの《迷惑》になって

しまうものなのです。

すでに故郷で生活している、僕の現在置かれている

日常生活をわずかでも考慮すれば、僕の故郷の情報など

不必要なのだ。どちらかと言えば、友人の彼自身の

今の生活状況を詳しく知らせて欲しかった。

友人の事を悪く言いたくはないのですが、


ご時勢なのです。50歳を過ぎても独身を貫き、

《結婚など論外》などと強く吠えていた若かりし当時。

妥協を許さず、普通の身の上にあらぬ人は、残念な事に

普通の人の気持ちを、推し量(はか)ることは

容易ではないのだ。気持ちが行き届かないだ。

彼の名誉のために、彼は決して人の気持ちが

分からない、野暮でも馬鹿な人間でもありません。

才能や能力は希薄で、名声も財産も乏しいですが、

仕事熱心で実直で真面目なのです。

友人は数多くはありませんが、お人好しで人間味あふれた

魅力的で楽しい人間なのです。でもいかんせん、

寂しがり屋で酒とたばことスポーツを愛する自由人なのです。

今の年齢になって、おそらく大きな過ちを犯してしまっ

たことに、ぼんやりと気づかされたことだろう。

身を固めそびれてしまった。独り身の《寂しさ》は

もはや退けられず、刻々と確固たる現実のものになっていく。


最後に室生犀星の有名な詩の5行を紹介して終わりにします。

ーーーー題名「小景異情(その二)」----

ふるさとは遠きにありて思ふもの

そして悲しくうたふもの

よしや

うらぶれて異土(いど)の乞食(かたい)となるとても

帰るところにあるまじや

異土とは故郷以外の土地、異郷のこと。

乞食(かたい)と読む。乞食(こじき)のこと。

うらぶれて=落ちぶれての意味。哀しい詩です。


今日はここまで。近藤浩二でした。

洋楽紹介します。ではまた。


フォリナーでコールド アズ アイスです。

1977年リリース。全米No.6位。デビューアルバム「フォリナー」からシングルカット。ボーカルのルーグラムと

ギターのミックジョーズとの共作。英国と米国の混成の栄光のロックグループ。

ピアノの4っつ打ちから始まる、力強いシンプルなロックナンバー。


 

ベットミドラーでローズです。

1980年リリース。全米No.3位。アルバム「ローズサウンドトラック」からシングルカット。ベットミドラー自身が主演している映画「ローズ」の主題曲です。数多くのミュージシャンにカバーされてる名曲中の名曲です。

愛についていろんな人が語っているが、

私にとっての愛とはこういうものよ。

愛の本質を歌った歌曲。


 

ベイシティーローラーズでアイオンリーウォノビーウイズユーです。

1976年リリース。全米No.12位。アルバム「デヂュケーション」からシングルカット。

邦題「2人だけのデート」パワーロックの王道。

日本でも大ヒット。高校生当時気に入った曲でした。

若い女の子にすごく人気のあった英国の5人の男性グループ。


 

イエスでロンリーハートです。

1984年リリース。2週連続全米No.1位。アルバム「90125」からシングルカット。

英国の老舗のプログレッシブロックグループ。こちらはメンバーを入れ替えた新生イエスの第一弾アルバム、大ヒット曲。

孤独の在り方を実感する楽曲。

様々な効果音をキーボードで演出したポップなロック。