節分

 

ーーーーー「今日節分!」ーーーーー 長い静けさを破って、か細い声で口をきる。

車窓から見える、代わり映えのしない単調な

道路脇の家並みをぼんやりと眺める。

週末土曜の夕刻だというのに閑散とした市内の主要道路。


ーーーーー「豆ある?」 暇つぶしに質問する。

 

疲れているのか、力ない返事が返った。

ーーーー「きのう、神社で頂いた」。  「ふん」。

不愛想に相槌(あいづち)を打つ。

 

疲れているだろうに、今から仕事で出張の

妻は、さぞやーしんどいーであろうと

ドライブを求めた自分が罪の意識でさいなまれる。

 

==1昨日の朔日市(ついたち)祭が、ひどく遠い過去に

思えるほど慌ただしい二月の始まりだった。

 

《あっ、そう言えば》《そのような事、最近、聞いたような》

《妻と、ちゃんと、向き合って会話していない事を、ーーー

ーーーさすがに痛感させられる》===

帰路途中、スーパーで恵方巻を二本購入。


テレビに翻弄(ほんろう)される、不確かな情報の世界から

引きずり出された9時過ぎに夕食の時間。その前に豆まきの計画を実行に移す。

寒空の中、家の前を通る市道に向けて57の大人が

声を張り上げる。

ーーー「鬼は外」、ーーー「福は内」。

56の女も同様に吠える。

---「鬼は外」、ーーー「福は内」。

ーー澄み切った寒空の静寂を突き破って響き渡る。ー--

ーーーー-「うるさーい」ーーーーー

の苦情が近所の番犬から持ち込まれる。===そうだ。

ふと忘れていた食欲がよみがえる。

「はらへっーーたーーー」

ダイニングのテーブルの席に着く。

お互いの視線が巻き寿司に集中する。

身体もあったまる澄まし汁。

「いただきまーす」。

巻き寿司をワクワクの気持ちで右手に握る。

今年の恵方の「南南東」を確認してほおばる。

「うまーーーい」種類はシンプルで妥当な

田舎(いなか)巻き寿司。

「美味しい」。具材のかんぴょうとほうれん草が上手く

噛み切れず唇(くちびる)からはみ出す。

人差し指で押し入れる。

美味しい巻も、残りあと数センチ。

親指、人差し指で一気にすべて口中に押し入れる。

澄まし汁で臓器へ流し込む。

ーー「うんぐっ」ーー「ズルズル」ーー「ゴックン」ーー

「調子良かったら、ーーー1メートルくらい食べられる」

「25センチくらいやから、4本いける?ーー無理やろーー」

軽い冗談で発言しただけなのに。

ーーー真(ま)に受けて返事するな。

疑心暗鬼(ぎしんあんき)の生じた発言にむっとした。


子供の頃に垂涎(すいぜん)の的として、

憧(あこが)れた贅沢な食事、

===スイカ1個をひとりで食べつくし===

===巻き寿司数本の丸かじり    ===


潜在意識の記憶の奥底からわきあがる食欲を

一度満足させてみたい。挑戦してみたい。

大人になった今だからこそ現実化できる贅沢。

大人になったからこそためらってしまう愚行。

時節の行事はひとどおり実践する我が家の

ありきたりの平凡な節分でした。

なぜか、しないと落ち着かない

==平凡==

そんな日常で今年も過ぎるのだろうか?

ーーーいや、絶対違うーーー

特別な記憶にも記録にも残る意義深い年にしよう。

と改めて心に刻む。

そして一日が終わる。しかるに、人生は続く。


そうなのだ、その《平凡》と真摯(しんし)に向き合って

粛々(しゅくしゅく)と繰り返し続けることで

偉業を成しえた偉人は数多く居る。捨てたもんじゃない。

まさに===「偉大なる平凡」===


今日はここまで。近藤浩二でした。

洋楽紹介します。ではまた。


ヂュービーブラザーズでロングトレインラニングです。

1973年リリース。全米No.8位。アルバム「キャプテンアンドミー」からシングルカット。ギターとリードボーカルの

トムジョンストンの作品。初期のデュービーの代表曲。

ギターのカッティングが超かっこいい。練習したもんです。

ツインドラム、トリプルギターで人気を博する。

西海岸結成の米国の老舗(しにせ)のロックバンド。


 

シーナイーストンでモーニングトレインです。

1981年リリース。全英、全米ともにNo.1位。アルバム「テイクマイタイム」からシングルカット。英国の女性ボーカル歌手。副題「ナインテュファイブ」9時から5時まで仕事って歌

女性目線の歌曲。

日本でも人気のあったモデルのようなグラミー受賞の美人歌手。


オリビアニュートンジョンでザナドゥです。

1981年リリース。全米No.8位。サウンドトラックからシングルカット。ELOと共演。ELOのジェフリンの作品。

ミュージカルファンタジーの映画にピッタリの幻想妖艶で楽しい楽曲。「ザナドゥ」とは歓楽の都や桃源郷の意味。


 

アーハーでテイクオンミーです。

1985年リリース。全米No.1位。アルバム「ハンチングハイアンドロー」からシングルカット。MTVのビデオが画期的で秀逸。二次元と三次元を行ったり来たりの優れたアイデア。

「テイクオンミー」=「take on me」とは「僕を受け入れて」の意味。