ある夏の日の思い出(ソフトクリームの寿命)

今日は久しぶりに外食しました。

外食と言っても贅沢ではありません。速い、安い、美味いのセルフサービスの、うどん屋です。

うどん屋に来ると、僕は学生時代の《悲劇》を今もって思い出します。

そして《悲劇》なのに、笑ってしまうのでした。


高校1年生の事でした。当時町の商店街には、安くて美味しい有名な、うどん屋がありました。

当時僕は頻繁に、土曜日の放課後、隣町の仲良かった友達と自転車でよく商店街を通って、別の友達の家に、二人して立ち寄っていました。

《一緒に勉強するという名目でしたが、本当はそこで将棋を打っていました。》


学校からの帰りに、友人は決まってうどん屋に自転車を止めるのです。「食べていこう。」

僕がお金持ってない。と言うと「おごっちゃるがや!」と微笑みながら、いつも言ってくれるのです。《有難い友人でした。》

かけうどん、当時一杯100円でした。《僕はそれすらありません。》

《ちなみに、当時僕のお小遣いはひと月2000円でした。》

《ほとんど本代に消えていました。》彼にはその本を貸してあげてました。

僕はいつも彼に甘えて、ごちそうになっていました。

《そんなこともあって、僕は今は極力、他人にはご馳走するようにしています。》


梅雨も過ぎた初夏の頃でした。

夜市の準備でアーケードは忙しそうでした。

その日の午後は実力テストの日で帰りは夕刻になっていました。別の友人の家でそのテストの答え合わせをすることになって、

帰りに立ち寄ることにしました。

お互いにお腹を空かしていました。

僕の期待通りに、僕たち二人は帰りに

そのうどん屋に立ち寄りました。


《ソフトクリーム始めました。100円》の張り紙がありました。

店内に入りました。

すごく混雑していました。しかもムーンとしていました。

暑さと湿気で不快でした。

温いうどんよりも冷たいソフトクリームを食べたい気分です。

しかし二人して、かけうどんを注文しました。

店内は狭かったのでした。

そのため両脇の壁には、

一人用のカウンターテーブルが設けられていました。

その日は僕たちも仕方なく、入って左側のカウンターに座りました。

僕たちが食べ終わる頃、

中学生らしい男子3人が

僕たちカウンター近くのテーブルに着きました。

席が空いていましたが、2人が座り、

1人は通路に立ったままでした。

1分後、立っている彼の所に、女定員がソフトクリームを手に持って、彼に手渡しました。

「少しサービスしたからね。」。

普通よりクリームが少し多く巻かれてそうでした。

彼はとっても嬉しそうに、

はにかみながら受け取りました。

僕はその様子を横目でチラチラと、

羨ましく見ていました。


《しかし彼はなぜか、すぐには、

なかなか食べませんでした。》

彼はうどんを待っている友人と、

何やらこそこそと話しているのでした。

おそらく、自分だけが先に食べるのは悪いと思って、

友人を待っていたのでしょう。

《そんな心優しい彼に、

思いもよらない現実《悲劇》が待っていました!!!》

店内はおそらく、温度が徐々に上がっていました。

手に持つコーンの端からクリームが

少しずつ溶け出してコーンを伝って、

床にポツリポツリとひとつふたつと垂れ落ちています。

そんな事にも気づかないのか、

彼自身はうどんを待っている友人との話に夢中です。


彼は空いた近くのカウンター席に座り直しました。

手に持つソフトクリームに斜めの力が入りました。

《ソフトクリームから声が聞こえてきました。

「早く私を助けて!!!」》

《僕には聞こえましたが、

彼に伝えるには時間がありません。》

《もうすでに、秒読みに入っていました。

10,9、8、7、6、、、、、》

彼にはその《ソフトクリームちゃん》からの

悲痛な叫びが聞こえなかったのでした。


コーンの長さに比べて、

クリームが少し長かったのでした。

しかもクリームをらせんの途中で巻き直していました。

《女定員の学生サービス精神が《あだ》となりました。》


その頃彼の友人たちにも、うどんが来ました。

ソフトクリームを手に持つ、彼の口と喉の中は、

ソフトクリームを食べたくて、

もうすでにカラカラなのでした。

さて食べようと意気揚々と、

高まる興奮を冷まそうと、

ソフトクリームを見ながら、

席に座り直そうとした、

まさにその瞬間でした。

ソフトクリームからの、

じらされた罰なのか、

何かの秩序が壊れて、

コーンのほぼ根元からソフトクリームが、

《彼の口の中に行かず、

床に食べられてしまいました。》


彼は唖然としてました。

そして恨めしそうにいつまでも床を見つめていました。

《彼の心情はいかばかりであったでしょうか?》

僕は言葉に表現できないほど、とっても悲しくて仕方ありませんでした。

《自業自得だ!!!》では言いきれない、

やり場のない悔しさも感じました。

しかしながら、

おかしくておかしくて、仕方ありませんでした。


不思議なことに、

彼は表情を少し引きつりながら、

友人と一緒に、

もう片方の手で床に落ちたソフトクリームを指差しながら、

笑っていました。

友人たち二人も一緒に笑っていました。


友人たちと笑っているその様子を見て、

僕はなぜか一段と悲しくなりました。

何一つ彼にしてあげることの出来ない自分の無力さも自覚しました。


僕に出来ることが、何かあったのでしょうか?

彼にソフトクリームをご馳走してあげるべきだったのか?

そのまま貴重な体験として笑いの思い出の一コマとして、留めて置いてあげるべきなのでしょうか?

彼にこれから生きていく人生の教訓として、

「渡る世間に鬼はなし」を知らせてやるべきか?

それとも「渡る世間は鬼ばかり」や「覆水盆に返らず」を教えてやるべきなのか?

今もって僕にはその正解が解らず、

笑い話として話してしまいます。

しかしその話をすると、

不思議と僕自身悲しくなってくるのです。


ビートルズでエイトデイズアウィークです。

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エルトンジョンでタイニーダンサーです。

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