わが塾の中学2年生は礼儀正しく「よろしくお願いします」
とぺこりと頭を下げ、帰り際には「どうもありがとうございまし
た」と顔を上げてしっかり目を見て照れながらも明るい表情で、
少し声高にはっきりした口調で言う。「今日私の誕生日」と
伝え、視線を向けると、恥ずかしそうに顔を赤めながらも、
うつむき加減で「おめでとうございます」と快く微笑みながら
顔をこちらに向けて優しく応えてくれた。
説明をして納得すると小生の顔をのぞき見て「ふふふ、へへへ」
と、手を口元に軽く当て、笑いながらうなずく。
それはそれは可愛らしいものだ。彼女はミデェアムヘヤーの
黒髪を頭の後方で小さくまとめ、小柄ながらもゴムまりのように
若さをはじけさせてトントントンと階上の勉強部屋へと笑顔を見せる。
バレーボールの部活帰りで、お腹を空かせているようなので、
好物のメロンパンを用意してあげると、いつも機嫌良く
美味しそうに上品な口を小さく開けてペロッとほおばる。
「どれだけ食べても太らないんです」と言うので余分に
2、3個準備してあげると、目を輝かせ物色して手に取って
冷たい飲み物とともに、喜んでほとんどたいらげる。好意を
素直に受け入れてもらえると、こちらもとっても嬉しくなる。
こんな素敵な子が自分の子供であったならいいのになあ、
と少しニキビが見えるものの見た目も可愛らしく、
小顔の上で微笑む可愛らしさが印象的な女性で、
素直で几帳面で礼儀正しく聡明な彼女は、子供らしい
誰からも好かれるとっても良い子で評判の生徒であろう。
それでも、「部活どんな ? 」と訊くと、言いにくそうに
眉間にしわを寄せてはにかみながらひと言こう答える。
「しんどい」と、正直に弱みもみせられて、父性を刺激され
誠にいとおしくなる。
季節が巡り桜が咲き誇って春が訪れ毎日がおだやかで平和だ。
英語の塾の送迎の折り、「行きたくなあーーい」「行きたく
なーーい」と駄々をこねるものの有無を言わせず到着すると
無言で不思議と一目散に教室へと走っていく。
授業を終え、車に乗り込むと後部から何やら声がする。
「あ、あ、あ、アップル」なおも「あ、あ、あ、アリゲーター」
少し間をおいて「ウームン」「ウーム」「ウーム」「あれ」
まわりの者も本人すらも、頭の中が ? におおわれていると、
「ウン ?」と首をかしげて何やら考え込んでいた彼女は、
背筋を伸ばし、あごを引いて姿勢を正して鼻をふくらませ大きく
息を吸い込むと気を取り直して再び「ウーム」「ウン ? 」
「ゴホン」「ゲッ」「ゴホン」「ゲッ」セキをふたつ吐き出すと
「ルーム」「ルーム」「できた」「できたよ」と整った顔を
クシャとさせ、大きく崩して微笑み、全身を弾けさせて
ひとり激しくはしゃぐ。天真爛漫で育ちの良さも感じさせられ
感情豊かで頭の回転が速く行動派の陽気な彼女はどんな時も
人を元気にさせてくれる、とっても楽しい女の子だ。
(悪く言えば、少し気性のはげしい、じゃじゃ馬かな?)
週末県をまたいでお迎え、車内の後部座席の彼にひとくち大の
菓子を与えると「ゲッ、ゴホン、ゴホン」「いつも、セキが
よく出るんですけれど・・・」とふとつぶやくと、
「コロナ? 」と一同驚きとともに発するやいなや
「うんうん、違うよ」と否定する。「お茶いる ?」「はい」
と元気な返事。「これおしっこみたい」
と言いながらいっきに飲み干す。「おかわりは ?」「はい」
「これ、おいちゃんのおしっこ ?」と言いながらまたも飲む。
「おばちゃんのおしっこも飲んでみる」とシモ発言が止まらない。
近づき耳元でこうささやく。「なんで、こんなこと言うか分かる?」
「コロナだから・・・」と言い訳がましく微笑む。
帰りの車内では離れがたいのか、何かしら我々に近づき
「何しちょる ?」「***のこと教えちゃろか ?」
しきりに話題を探ろうとやっきになって色々と振ってくる。
「なぞなぞ」「ぶ、で始まる***の好きなもの、何だ ?」
「ぶた」「ぶた?」「ブロッコリー?」「ブス?」と矢継ぎ早に
聞き取れないほどにまくしたてると、困惑した表情になって
「うっせー、うっせー」「うっせーぞー」と大声で叫びあげる。
「ぶーぶ」。ややして、「こんど晴れたら」と言葉を切ると考え
込んでいるようで「ピクニックで、焼き肉がしたいな」と甘える
ように小さく言った。「それ、バーベキュー、て言うのやで」と
言うと「そうなん、ばーばーきゅうー ?」
「ばーばが、きゅう ?」「ほんと ? 何それ、」と
語尾を上げて視線をこちらに向ける。「ううん、バーベキュー」
と聞くと、いっそう眉を吊り上げ困った表情で顔をそむけうつむく。
風がやみ雨も止んで、霧が晴れると、お別れの時が・・・
車に乗り換えるため外に出て、大人が話し込んで
いる中、わずかにはみ出た丸れんが(幅10センチ、長さ20
メートル)の上を器用に歩く。車が通過しようとすると道脇へ
大きくそれ素知らぬ顔で通過する車を見過ごす。一歳の時から
足しげく我が家に通った付き合いで親族並みの近しい間柄で
お互いがお互いに特に気づかうこともなく、ありのままに
振る舞え合える関係へと深められた。
今日はここまで。近藤浩二でした。
ではまた。すわって半畳、寝て一畳。
誕生日には大好物の焼き肉をたらふく食べた。
焼き肉食べるためだけに、間食を控えたり、運動したり、
ダイエットしたりと、健康に気づかって生活している。