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同行二人

弘法大師空海が開いた「四国88か所」

徳島の1番札所から高知、愛媛、そして香川の88番札所までの88ケ寺を弘法大師様と共に参る「同行二人」の巡礼。

2016年には、四国遍路1200年を迎えました。

今日、高松から帰りに、ふともう15年ほど前になるお遍路さんとの出来事を思い出しました。

ちょうど、主人の大阪の友達が新婚旅行も兼ねて四国88か所を回ってる中、西条では我が家も遍路宿のように泊まってもらい、数日間我が家を起点にお遍路。

香川県の66番札所 雲辺寺に行く日は 一緒に行かせてもらい、帰りJR箕浦駅にあった「うどんやさん」でおうどんを食べ、隣の古びた駅舎の方に行ってみた所、お遍路さんが構内に。

無人駅なので、その日の宿に選んだ歩き遍路さん。

88番札所からお参りする逆打ちの遍路中で、その日わたし達も訪れた雲辺寺に、ロープーウェイを使わず下から登って行く際 みつけたという「アケビ」を私たちにも分けてくださり

お礼に、まだその頃テレフォンカードが使われていたので、カードを御接待。

新居浜市に施術院を置いてた頃だったので、新居浜を通る時には連絡下さいね…と。

それから、数日たったころ お遍路さんからあの時のテレフォンカードのお礼も含めて電話いただき 数日泊まっていた新居浜の将棋会館に迎えに行かせてもらい その後施術院まで、

カイロの施術と無洗米を御接待させて頂きましたところ、お礼にと自らの句集とカメラマンさんが写してくれたという写真集まで頂き、よく話を聞くと、歩き遍路では有名な方らしく

みんなからは「遍路 幸月さん」と呼ばれているそうでした。

リヤカーに荷物を乗せ、365日歩いて…歩いて…春も夏も秋もそして冬も…。

ただ、新居浜の将棋会館では 色々と良くしてくれる人がいて、何日か泊めてもらえるらしい。

四国の中、もう何年もお遍路さんを続けている幸月さんには、私の想像も出来ないような人との大切な絆が生まれているようでした。

そして、その翌年にNHKの全国放送のドキュメンタリー番組で、遍路幸月さんが1時間番組で特集され…びっくり。

私が出会わせてもらった時も、かなり高齢で足腰も弱っており それでも歩き遍路を続けておられる幸月さんの1年を追いかけたドキュメンタリー番組は、我が子の冒険を見るような 他人事とは思えない感動を覚えたものです。

そして、その放送から数週間経った時 いきなり「幸月さん逮捕」という新聞記事。

あの箕浦駅で一緒に幸月さんと会った、大阪の友達夫婦も NHKの番組やこの逮捕という記事に驚き、連絡が入ったほど…。

なんと、大阪で傷害事件を起こし 逃走しながらの四国遍路。

ちょうど新居浜のうちの院に寄ってくれた時、お話させてもらった中で、「母親の葬式にも帰ってないんだ…。」と話されてたことも聞いており、

お母さまの死後、四国遍路の道を選んだのかも知れない。

偶然出会い、言葉を交わさせて頂き 幸月さんのことを少しでも知ってる私たち夫婦は、この逮捕されたことに逆に色々な事から解放され、獄中では冬の寒さや 夏の暑さ、雨や雪…また食事の心配をしなくて済むことに安堵した気持にもなったほど…。

全国放送で放映される際、幸月さんは本名を告げられたそう…。

ちょうどその番組を見ていた、事件当時大阪にいた刑事さんが 千葉の自宅でテレビを見ていて、わかったのだとか…。

幸月さんも、きっと救いの手を求めてたのかもしれない…。

もう何年も何年も、四国を歩き罪を償い懺悔してきた者に、神さまが愛の手を差し伸べてくれたのだと思う。

あの頃、この逮捕劇に幸月さんを悪く言う人もいました。

何度も四国を回っていたので、御接待をしていた人も 「犯罪者だったんだってね」と…。

当然、人を傷つけたり 殺してはいなくても逃走することは許されないことではあるけれど、その逃げ延びてる間 毎日事件のことは忘れられなかったことだろうと…。

そして、九州のお母さんのお葬式に行けなかったことも…。

その後、何年刑務所に居たのか?

今、生きているのか…?

全くわからないが、今日インターネットで調べてみた所 2003年6月27日にNHKの番組が放送され、7月10日に新聞に逮捕の記事が出ていたようで、

逮捕された時の年齢が80歳。14年前ということは、今生きていたら94歳。

他のひとのブログには2010年に新居浜に住む幸月さんの所に泊めてもらったとも書かれてあり 今も、生きていてくれてるとしたら残りの人生 誰かのために自分の出来ることを精一杯されているのでしょうか?

私がお会いした時も、新居浜の将棋会館で数日お手伝いをされていたので、近いうち将棋会館訪ねて行ってみようかな~とも思わされます。

今日は、新月。

幸月さんも 闇の中にいる時 光を与えてくれるお月様に幸せを感じ、自身の呼び名を「遍路幸月」とされたのでしょうか。

人は、自分が望む以上に天から望まれて生かされているということ。

死にたい夜もきっとあったはず…。

生きたくても生きられず病で旅立つ人もいる。

今、いる奇蹟。

四国を巡るお遍路さんの胸の内には、きっと抱えきれないほどの悲しみを背負った人もいるかも知れないけれど、

どうかこの四国、弘法大師さんと同行二人、一筋の光を見つけ 命ある限り生きること…生き切ること願ってます。

もうすぐ3月。菜の花や梅や桜の花のもと、お遍路さんの鈴の音が響く良い季節。

今日の歌は、「糸」Bank  Bandでのカバーです。