桜満開

「なんと、まあ、気持ちの良い、ながめだ」

見渡す限り果てしなく、遮(さえぎ)るものなど何ひとつない、

どこまでも大きく、広がっている青空。

春の日差しが、如来(にょらい)の慈悲のごとく、

広大無辺(こうだいむへん)に、万物の上に

優しく柔らかく降り注いでいる。


ふいに風を感じたくて、窓を開ける。

「ヒューン、ヒューン、ブーン、ブーン」気持ち良い。

視線を外に向けると、車窓から、ときおり目にする

極めて白色に近い、うすーいピンク色の花びらが

寂しくない程度に、身を寄せ合っている集団。

 

また、忘れた頃に視界に入る、垂れ下がった

しだれた枝に、しがみつくように点在している

濃い紅色の花弁(かべん)のかたまり。

 

小道の脇に位置する、さらさらと流れる小川

近くの原っぱ一面に、群集している菜の花たち。

 

小高い山沿いの緑の中に、まばらに程よく適在する

花々たちの色彩ぐあい。水に溶かした絵具を

キャンパスにひっくり返してしまったような色合い。

緑、うすいピンク、紅色、黄色、等々。

 

人為(じんい)では、到底及びもできない、

これぞまさに絶妙な《自然美》。


春の陽気に誘われて、車に乗り込み

自然の展覧絵巻に酔いしれる。

「今日は、もう、何もしたくない」、

「車の中で、横になって、寝るーーう」。

名もなき広場に停車した。

少し眩しいきらきらと、七色に輝く日差し。

そよ風にひらひら、舞い落ちる花びら。

笑顔でわいわい、はしゃぐ人々。

誰もが、平安を享受して心底、実感している解放感。

厳しい冬の寒さを、乗り越えた、からこその

柔和(にゅうわ)で優しい春の《温(ぬく)もり》。


 小倉百人一首 「ひさかたの ひかりのどけき 春の日に 

     しづ心なく 花の散るらむ」紀友則(きのとものり)

古今和歌集


今日はここまで。近藤浩二でした。

ではまた。


 

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