塾考

いつの時代でも、どこの学校でも、5月の連休が終了すると、

定期試験が始まりました。試験の対処こそ、我々学習塾では、

その存在意義を誇示し、見せびらかす、腕の見せ所なのです。

でももう、それも限界に来ていることを思い知らされました。


今週から連日、夕刻から連夜、脳みそフル稼働です。

今年から塾生の確保のため、小学生から高校生まで枠を

広げました。そのため、前年の試験対策が通用しなくなり、

新たな勉強の必要に迫られるのです。入学した高校が進学校では

ないため、予想は出来ましたが、意外にも、本人のメモによると

国語の試験に「干支(えと)」すなわち十二支の《読み》、

《漢字》と対応する《動物》が問われる問題があるというので

す。もう一般常識です。僕自身、順番に漢字でホワイトボードに

書き出そうとしましたが、いきなり、自分の干支である、二つ目

の丑(うし)で、つまづいたのです。「多分、東大生でも書けな

いんじゃないか。」ってお茶を濁してごまかして、スマホで調べ

てしまいました。すると学生は「先生、スマホ使っても良いです

か?」「自分で調べた方が早いか」彼は自分のスマホを取り出し

て、それを見ながら練習を始めたのです。すると彼は、ものの

数分で、十二支を一度は覚えました。塾講師なんて《かたなし》

です。これの意味するところは? 私の存在意義は一体どこに?

とうとうやって来たのです。塾講師の仕事が無くなる!! もう


《師》や《士》の付く職業の人間はAIに取って変わられると

いった時代の変遷を痛感させられました。少しの知識を持った

我々のような人間は、小学生でさえ持っている携帯電話の、足元

にも及ばない、容易に負けてしまう、想像を大きく超えて凌駕

(りょうが)されるのです。情報処理の速さや能力だけを取り上

げれば、人間はとてもコンピューターには及びません。2045

年には、人工知能は全人類の脳を超えるのです。そして数分後

彼は覚えたであろうと、十二支のテストを自らしてみましたが、

うろ覚えだったようで、いくつか間違えていました。彼が一言。

「先生、覚えるのって大変ですね。」って顔を引いて照れくさそ

うに笑いました。そこで僕は、読んだ本の受け売りで得意げに

話しました。「覚えるのはそれほど難しくはないのよ。」

「本当に難しいのは、忘れる事。覚えるよりも、忘れる事の方が

はるかに、難しいのよ。」「人は一度覚えてしまった事は、忘れ

たくても忘れることが出来ない生き物なのです。」「覚えるため

の方法は色々、考えられているのに」「確実に忘れられる方法は

ひとつも無いのですから。」「そういやー、そうですね。」

彼は座り直して、僕を二度見返し、相槌を打ちました。また

コンピューターが不得意で、人間の存在意義のひとつに

《雑談力》もあるのです。《無駄話》は出来ても《雑談》は

存外、コンピューターには難しいのです。人間でも難しい

ですが。人間は覚えておきたいことは、忘れたくないのに、

忘れたい事は、忘れられないなんて、不便極まりないですよね。

楽しく《雑談》するには、そんな人間の本質も十分に理解しない

と上手に付き合うこと出来ないですから。「あの話、持ち出して

も、もう忘れてるだろうから、大丈夫かな・・」《失恋話し》や

《失敗話し》など、忘れたい嫌な思い出は、なぜに忘れない?


学校には、勉強以外に存在意義があるから、そこでの先生が

居なくなることは決してありませんが、勉強だけを教える

塾講師はもう不必要な時代なのです。本や新聞、雑誌もコン

ピューターに駆逐(くちく)されると言われてましたが、

利便性よりも紙媒体の温かさを渇望する人達が存在する限り、

その需要は無くなりません。うーん、人間が血を流す寿命ある、

不完全な動物でほんとに良かった。体温を持った、決して

リセット出来ない、一か所に落ち着つことの無い存在で、好奇心

から変化を求める呼吸をする生物である、所以(ゆえん)なので

す。全ては理(ことわり)ってことなのです。

以下、某成功者の言葉です。

今あなたがしている事は、

誰かが見ています。いや、誰もが見ています。

手抜きは、必ず、ばれてしまいます。しかし、安心して下さい。

丁寧は、きっと、伝わります。加えて、

成功を目指す人は、3つのものを配ります。

目配り・気配り・心配り。

自分一人では、決して、成功出来ません。

周りの人たちに、3つを配りましょう。さらに、

目配りには、鳥の目、魚の目、虫の目、3つが大切です。

全体を観る目、流れを観る目、詳細を観る目、です。


今日はここまで。近藤浩二でした。

ではまた。P.S. I LOVE YOU.