《簡潔さこそが知恵の神髄》なのです。
32型のテレビだけが、際立って個性を主張している
特にこれといって、何もない8畳ほどの広さの簡素な部屋。
部屋の真ん中あたりで、一夜をともにした男女。
「春はあけぼの、ようよう白くなりゆく山ぎわ、少し明かりて」
東に面した広い窓から、差し込む朝日の熱を身体全体で
実感した彼は、明け方に目覚めた。部屋は明るいが
今だ静かだ。初めて目にする部屋の景色に、
きょろきょろあたりをうかがってみるが、
何かの違和感を感じて、
起き上がるべきか、どうか悩んでいた。
ーーー「あー、よく眠れたよー」---
ーーー「ここって、どこなんだろう?」ーーー
ーーー「あっ、お母さんかな?ーーー
ーーーでも何か違うような、、、」ーーー
「***くん、起きた、おはよう」ーーー
彼の起床に気づいた妻が起き上がり、声をかける。
男は天井につるされた、カモメの装飾物を
興味深く見入っていた。突然の声に眉根を寄せた。
それは母親でないことは明白だった。自分自身が母親の手に
戻るまでは、決して機嫌を損ねないように
《いい子でいよう》と、そしてこの場をなんとか
やり過ごそうと、小さな心に強く決め
あたりさわりのない表情を保つようにした。
その後8時過ぎに部屋を開ける音で、目覚めた僕は
ふたりの姿を見て起き上がろうかと考えた。
彼は控えめに僕の隣にすっと入り込む。
なぜか、そのよそよそしさに気が引けた。
右隣に振り返るたびに、幼児の小さな横顔を
とらえる。彼は眠ることもなく、まばたきをしながら
とらえどころのない、まったく変わらぬ表情で
静かに、ひたむきに何かを待っているようだ。
しかし彼の目に、ちらりとのぞく弱さが、僕の心を揺さぶった。
「***、今日はお母さん、迎えに来るよ、安心やで」
「もう少しの辛抱だから、」、「***はえらい、ええこや、」
「よしよし、よしよし」。励まし、頭をなでてやる。
彼は朝食は気兼ねなく、遠慮なくときおり笑顔を
みせながら味わっていた。食事が終わると、
昨夜の不安と緊張が、遠い昔のような気がした。
ふいに玄関の引き戸の滑る音が届く。
「ガラガラガラ、おはようございます」
疑うべきもない、まごうことなき母親の声に
表情が一変する。ーーー「もう、長居は無用だ」ーーー
突然、待ちわびていた訪れた朗報に彼の反応は
冷静ではいられなかった。
自分でも想像できない、
声がでる。「あ゛ー、あ゛ー」
心の奥底で望んでいた、深い安堵感と喜びから
不思議と泣けてきそうだ。「わーん」。
椅子を引いて降ろしてあげる。瞬時に
誰よりも一番早く、まっすぐに玄関に向かい
この二日間で最高の笑顔を投げかけ
母親の懐(ふところ)に抱かれる。親子はほっとする。
一見激しく情熱的そうであったが、その再会は
奇妙なことに静かで穏やかであった。
彼は少し紅潮して、口ごもりながら、
泣きじゃくってそうであったが、すぐに正気に戻った。
母親は妙に冷静で、申し訳なさそうに、こちらに視線を
向けながら、笑みを浮かべてわが子を抱きしめていた。
この二日間で、様々な事柄が彼の身に起こり
彼自身が多くを学び、大きく変わったことも事実だ。
おそらく彼の中で学んだ真実のひとつは、
《母親だけが自分自身の本当の安堵と信頼を成しえる、
唯一無二の存在である》といった真実を
揺るぎないものにしてしまい、決して他の人では
だめだとの思いに至ったはずだ。
その後玄関内を元気に、無目的にうろつき
不思議と我々の顔を、ご機嫌をうかがうように、仰ぎ見ながら
母親の腕に抱かれると再び、未練がましく何度も
振り返り、笑みを振りまきながら去っていった。
《赤ん坊って罪な奴だ》
でも許せて、また絶対会いたいと思わせる。
今日はここまで。近藤浩二でした。
洋楽紹介します、ではまた。
ビートルズで「愛こそはすべて」です。
1967年リリース。全英全米ともにNo1位獲得。
1967年6月世界初の衛星中継テレビ番組
「アワー・ワールド」にイギリス代表としてビートルズは
出演し、新曲「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」を披露しました。
フランス国家「La Marseillaise(ラ・マルセイエーズ)」から曲が始まる。
曲のエンディングでイギリス民謡の「グリーンスリーブス」や
アメリカン・ジャズの「イン・ザ・ムード」が挿入されています。
最後の「シー・ラブズ・ユー、イェーイェーイェー」はジョンの
アドリブです。
ジャーニーでオープン アームズです。
1982年リリース。5週連続全米No.2位の自身最大の大ヒット。
アルバム「エスケイプ」からシングルカット。
イーグルスでホテルカリフォルニアです。
1976年リリース。全米No1位獲得。同名タイトルアルバムからシングルカット。言わずと知れたロックの名曲。
ギターのドンフェルダーのギターのみの曲「メキシカンレゲー」
が元曲。ドンヘンリーが歌詞をつけた。
12弦ギターのイントロのメロディーが有名。
チューニングが合いすぎて6弦ギターに聞こえてしまう。
終盤のギターソロは聞きごたえ十分。